理学療法士が教える!整形外科リハビリにおける「片上肢のしびれ」評価と原因
理学療法士が教える!整形外科リハビリにおける「片上肢のしびれ」評価と原因
この記事は、柔道整復師として整形外科でリハビリテーションに従事されているあなたに向けて書かれています。日々の臨床で直面する「片上肢のしびれ」という症状に対し、理学療法士の視点からどのような評価を行い、どのような原因を考察するのかを解説します。ROM(関節可動域)、MMT(徒手筋力テスト)、TOS(胸郭出口症候群)検査といった具体的な評価方法に加え、その結果から考えられる原因や、さらに詳細な検査の必要性について、分かりやすく説明します。専門的な知識だけでなく、患者さんへの対応やコミュニケーションについても触れ、明日からの臨床に役立つ情報を提供します。
理学療法士の先生に質問したいです。
私は柔道整復師で、現在整形外科でリハビリをしていますが、理学療法士の先生とはやはり見立てが違うのでうかがいたいのですが、仮にざっくばらんですが、70代女性で「片上肢のしびれが抜けない」といった人がみえたらどういった評価をしますか?
ROMやMMT的なことです、他にもTOSの検査とかでしょうか?
またそれによってどういった原因が考えられますか? よろしくお願いします。
1. 評価の全体像:問診と視診からスタート
70代女性の「片上肢のしびれ」という主訴に対し、理学療法士としてまず行うべきは、詳細な問診と視診です。これは、症状の原因を特定し、適切な評価項目を選択するための重要なステップです。
1-1. 問診:患者さんの声に耳を傾ける
問診では、以下の点を中心に尋ねます。
- しびれの性状:どのようなしびれなのか(ピリピリ、ジンジン、チクチクなど)、強さ、持続時間、出現頻度を詳細に確認します。
- 発症状況:いつ、どのようなきっかけでしびれが出始めたのか。外傷の有無、動作との関連性(特定の動作で悪化するかなど)を把握します。
- 既往歴と生活習慣:過去の病歴(糖尿病、高血圧、心疾患など)、服用中の薬、喫煙歴、飲酒習慣、仕事内容や日常生活での動作パターン(長時間のデスクワーク、特定の姿勢での作業など)を確認します。
- 随伴症状:しびれ以外に、痛み、脱力感、冷感、熱感、浮腫、皮膚の色調変化などの症状がないか確認します。
- 日常生活への影響:しびれによって、日常生活(食事、着替え、入浴、睡眠など)にどのような支障が出ているかを確認し、患者さんの困り事を具体的に把握します。
1-2. 視診:客観的な情報を得る
視診では、以下の点を観察します。
- 姿勢:頸椎や肩甲骨の位置、肩関節の高さ、腕全体の姿勢などを観察し、異常がないか確認します。
- 皮膚の色調と温度:皮膚の発赤、蒼白、チアノーゼ、浮腫の有無、皮膚温の左右差などを確認します。
- 筋萎縮の有無:肩や腕の筋肉に萎縮がないか確認します。特に、三角筋、上腕二頭筋、前腕の筋肉などを注意深く観察します。
- 腫脹の有無:関節や周囲組織に腫れがないか確認します。
- その他:傷跡、変形、異常な皮膚所見(発疹など)がないか確認します。
2. 身体評価:具体的な検査と評価方法
問診と視診で得られた情報をもとに、具体的な身体評価を行います。ここでは、ROM、MMT、TOS検査を中心に、その他の評価方法についても解説します。
2-1. ROM(関節可動域)測定
肩関節、肘関節、手関節、手指の関節のROMを測定します。特に、肩関節外転、外旋、肘関節屈曲・伸展、手関節背屈・掌屈、手指の屈曲・伸展などの動きを詳細に評価します。ROM制限がある場合は、その原因(関節包の拘縮、筋肉の短縮など)を特定するために、エンドフィール(関節運動の最終域での感覚)を評価します。
ROM測定は、しびれの原因を特定するための重要な手がかりとなります。例えば、肩関節の可動域制限がある場合、肩関節周囲炎や五十肩の可能性が考えられます。また、頸椎の動き(屈曲、伸展、回旋、側屈)を評価し、神経根の圧迫や脊髄の圧迫がないかを確認することも重要です。
2-2. MMT(徒手筋力テスト)
肩関節、肘関節、手関節、手指を動かす筋肉の筋力を評価します。MMTは、各筋肉の神経支配を評価し、神経の圧迫や障害の有無を判断するための重要な指標となります。評価する筋肉の例としては、三角筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、前腕屈筋群、前腕伸筋群、手指の屈筋・伸筋などがあります。
MMTの結果から、特定の筋肉の筋力低下が認められた場合、その筋肉を支配する神経の圧迫や障害が疑われます。例えば、橈骨神経麻痺の場合、手関節の伸展や指の伸展に筋力低下が見られることがあります。また、尺骨神経麻痺の場合、手指の細かい動き(つまむ、掴むなど)に支障をきたすことがあります。
2-3. TOS(胸郭出口症候群)検査
胸郭出口症候群(TOS)は、鎖骨と第一肋骨の間、または斜角筋の間で神経や血管が圧迫されることで、肩や腕にしびれや痛みが生じる疾患です。TOSの評価には、以下の検査を行います。
- アドソンテスト:座位で、患者さんの患側の腕を外転・外旋させ、橈骨動脈の拍動を触診しながら、患者さんに頭を患側に向かせ、顎を挙上させます。橈骨動脈の拍動が減弱または消失した場合、陽性と判断します。
- ライトテスト:座位で、患者さんの患側の腕を挙上し、外転90度、外旋位にします。橈骨動脈の拍動を触診し、拍動が減弱または消失した場合、陽性と判断します。
- エデンテスト:座位で、患者さんの両肩を後方に引き、顎を引きます。橈骨動脈の拍動を触診し、拍動が減弱または消失した場合、陽性と判断します。
これらのテストは、TOSの可能性を評価するためのスクリーニング検査です。陽性であった場合は、さらに詳細な検査(神経伝導速度検査、MRIなど)を行う必要があります。
2-4. その他の評価項目
上記の評価に加えて、必要に応じて以下の検査を行います。
- 知覚検査:触覚、痛覚、温度覚、位置覚などの感覚を評価します。感覚異常の分布や程度を確認し、神経の障害部位を特定します。
- 深部腱反射:上腕二頭筋反射、上腕三頭筋反射、腕橈骨筋反射などを評価し、神経根や末梢神経の障害の有無を確認します。
- ジャクソンテスト:座位で、患者さんに頭を患側に傾けさせ、その姿勢で圧迫を加えます。症状が悪化した場合、神経根の圧迫が疑われます。
- スパーリングテスト:座位で、患者さんに頭を後方に反らせ、患側に側屈させます。症状が悪化した場合、神経根の圧迫が疑われます。
- ティネルサイン:手関節や肘関節の尺骨神経や正中神経の走行部位を叩打し、しびれや放散痛が誘発されるかを確認します。
- ファレンテスト:手関節を最大限に屈曲させ、1分間保持します。しびれや痛みが誘発された場合、手根管症候群の可能性が疑われます。
3. 原因の考察:考えられる疾患と病態
評価結果に基づいて、考えられる疾患や病態を考察します。70代女性の「片上肢のしびれ」の場合、以下のような原因が考えられます。
3-1. 頸椎症性神経根症
頸椎の変形や椎間板ヘルニアなどにより、神経根が圧迫されることで、肩や腕、手にしびれや痛みが生じます。多くの場合、片側の腕に症状が現れ、首の動きや姿勢によって症状が悪化することがあります。MMTで特定の筋肉の筋力低下が見られる場合や、知覚検査で感覚異常が認められる場合は、この可能性が高いと考えられます。
3-2. 胸郭出口症候群(TOS)
鎖骨と第一肋骨の間、または斜角筋の間で神経や血管が圧迫されることで、肩や腕にしびれや痛みが生じます。腕を挙上したり、特定の姿勢をとることで症状が悪化することがあります。TOS検査で陽性反応が出た場合、この可能性を疑います。
3-3. 手根管症候群
手根管内で正中神経が圧迫されることで、手や指にしびれや痛みが生じます。夜間や早朝に症状が悪化することが多く、母指、示指、中指にしびれが集中することが特徴です。ファレンテストやティネルサインが陽性の場合、この可能性を疑います。
3-4. 肘部管症候群
肘部管内で尺骨神経が圧迫されることで、小指や薬指にしびれや痛みが生じます。肘を曲げた姿勢や、肘を圧迫することで症状が悪化することがあります。ティネルサインが陽性の場合、この可能性を疑います。
3-5. 肩関節周囲炎(五十肩)
肩関節周囲の組織(関節包、腱板など)に炎症が生じることで、肩や腕に痛みや可動域制限が生じます。肩の動きが悪くなり、特に夜間に痛みが増強することがあります。ROM測定で可動域制限が見られる場合、この可能性を疑います。
3-6. 脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)
脳血管障害によって、片側の手足にしびれや麻痺が生じることがあります。問診で、頭痛、めまい、意識障害などの症状が認められた場合、緊急での対応が必要です。神経学的検査(CT、MRIなど)を行い、早期に診断・治療を開始する必要があります。
3-7. 末梢神経障害
糖尿病などの基礎疾患や、薬剤性、外傷などによって、末梢神経が障害されることがあります。知覚検査やMMTで、特定の神経支配領域に沿った感覚異常や筋力低下が見られる場合、この可能性を疑います。
4. 追加検査と専門医への紹介
上記の原因を特定するために、必要に応じて追加検査を行います。また、専門医への紹介も検討します。
4-1. 追加検査
- レントゲン検査:骨折や変形性関節症、頸椎の異常などを評価します。
- MRI検査:神経根の圧迫や椎間板ヘルニア、腫瘍などを詳細に評価します。
- 神経伝導速度検査:神経の伝達速度を測定し、神経の圧迫や障害の程度を評価します。
- 血液検査:糖尿病や甲状腺機能異常、炎症性疾患などを評価します。
4-2. 専門医への紹介
以下の場合は、専門医への紹介を検討します。
- 診断が困難な場合
- 症状が改善しない場合
- 症状が悪化する場合
- 脳血管障害の疑いがある場合
- 手術が必要な場合
紹介先としては、整形外科、脳神経外科、神経内科などがあります。
5. リハビリテーション:具体的なアプローチ
診断結果に基づいて、リハビリテーションを行います。以下に、具体的なアプローチの例を示します。
5-1. 頸椎症性神経根症に対するリハビリ
- 疼痛緩和:温熱療法、電気療法、牽引療法などを行い、痛みを緩和します。
- 可動域改善:頸椎や肩関節の可動域訓練を行います。
- 筋力増強:肩や腕の筋力トレーニングを行います。
- 姿勢指導:正しい姿勢を指導し、再発を予防します。
5-2. 胸郭出口症候群(TOS)に対するリハビリ
- 姿勢指導:肩甲骨を正しい位置に保つように指導します。
- ストレッチ:斜角筋や小胸筋などのストレッチを行います。
- 筋力トレーニング:肩甲骨周囲の筋力トレーニングを行います。
- 神経モビライゼーション:神経の滑走性を改善する運動を行います。
5-3. 手根管症候群に対するリハビリ
- 手関節固定:夜間や安静時に、手関節を固定します。
- ストレッチ:手根屈筋群や手指屈筋群のストレッチを行います。
- 神経モビライゼーション:正中神経の滑走性を改善する運動を行います。
5-4. 肘部管症候群に対するリハビリ
- 肘関節固定:夜間や安静時に、肘関節を軽度屈曲位で固定します。
- ストレッチ:尺骨神経の走行部位のストレッチを行います。
- 神経モビライゼーション:尺骨神経の滑走性を改善する運動を行います。
5-5. 肩関節周囲炎(五十肩)に対するリハビリ
- 疼痛緩和:温熱療法、電気療法などを行い、痛みを緩和します。
- 可動域改善:肩関節の可動域訓練を行います。
- 筋力増強:肩周囲の筋力トレーニングを行います。
- 日常生活指導:肩に負担のかかる動作を避けるように指導します。
これらのリハビリテーションは、患者さんの状態に合わせて調整する必要があります。理学療法士は、患者さんの症状や状態を評価し、個別のプログラムを作成し、指導を行います。
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6. 患者さんへの対応とコミュニケーション
患者さんの「片上肢のしびれ」に対する対応では、以下の点を意識することが重要です。
6-1. 傾聴と共感
患者さんの訴えをよく聞き、共感することが重要です。しびれは、日常生活に大きな影響を与える症状であり、患者さんは不安や不快感を感じています。患者さんの気持ちに寄り添い、安心感を与えるように努めましょう。
6-2. 分かりやすい説明
専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明することが重要です。患者さんが理解しやすいように、症状の原因、検査内容、治療方法などを丁寧に説明しましょう。図やイラストを活用することも効果的です。
6-3. 治療への参加を促す
患者さんが主体的に治療に参加できるように、治療の目的や効果を説明し、積極的に質問を受け付けましょう。患者さんのモチベーションを高め、治療効果を最大限に引き出すことが重要です。
6-4. 継続的なフォローアップ
治療の経過を定期的に確認し、必要に応じて治療内容を調整します。患者さんの状態の変化に注意し、適切なアドバイスやサポートを提供しましょう。
7. 柔道整復師の先生へ:連携と情報共有
柔道整復師の先生方との連携は、患者さんの治療において非常に重要です。整形外科でのリハビリテーションにおいては、医師、理学療法士、柔道整復師がそれぞれの専門性を活かし、チームとして患者さんをサポートすることが求められます。
7-1. 情報共有の重要性
患者さんの状態や治療方針について、積極的に情報共有を行いましょう。問診結果、評価結果、治療内容、経過などを共有することで、より質の高い治療を提供できます。特に、患者さんの症状の変化や、治療に対する反応については、密に連携を取り合うことが重要です。
7-2. 役割分担の明確化
それぞれの専門性を理解し、役割分担を明確にしましょう。医師は診断と治療方針の決定、理学療法士は機能評価とリハビリテーション、柔道整復師は手技療法や運動療法など、それぞれの専門性を活かして患者さんをサポートします。
7-3. 相互理解と尊重
互いの専門性を尊重し、協力体制を築きましょう。定期的なカンファレンスや情報交換の場を設け、相互理解を深めることが重要です。患者さんにとって最善の治療を提供するために、チームとして連携し、協力し合うことが不可欠です。
8. まとめ:明日からの臨床に活かすために
この記事では、柔道整復師の先生が整形外科リハビリテーションにおいて直面する「片上肢のしびれ」という症状に対し、理学療法士の視点から評価方法、原因の考察、具体的なリハビリテーションアプローチ、患者さんへの対応について解説しました。ROM、MMT、TOS検査などの具体的な評価方法を理解し、その結果から考えられる原因を考察することで、より適切な治療を提供することができます。また、患者さんの訴えに耳を傾け、分かりやすい説明を心がけることで、患者さんの満足度を高め、治療へのモチベーションを向上させることができます。
日々の臨床で、この記事で得た知識を活かし、患者さんの症状改善に貢献してください。そして、医師、理学療法士、柔道整復師が連携し、チームとして患者さんをサポートすることで、より質の高い医療を提供し、患者さんのQOL(生活の質)向上に貢献できることを願っています。